宝石の処理について①

地球から生まれた美しい石は人間をずっと魅了し続けています。
時代によって護符やお守り、権力の象徴、お金(資産)など色々な使われ方をしてきました。

大きな原石は希少だっただろうし、ヒビが入っていたかもしれません。
加工の途中で欠けてしまったり、あるいは代々と継がれていく途中で壊れてしまったものもあるでしょう。

衝撃に脆い石、日光に弱い石もあります。
美しい石をより美しいものにしたい、ずっと使い続けたい。
人間の強い思いが技術を生み出し、現在では様々な処理が施されています。

古くは一定の階級の人の持ち物だった宝石が、一般の人も手に入れることが出来るようになった。
技術の進歩のお陰です。

現在、行われている主な処理は以下の通りです。

・加熱
・照射(放射線照射)
・含浸(オイル、樹脂、ワックス、鉛ガラス)
・拡散加熱
・高温高圧

いずれも天然の鉱物のの色や見た目、耐久性の向上を目的としています。

私は処理を知った時は「天然石なのに天然じゃないの!」と驚きました。

でも、よく考えたら装飾品としてカットした時点で人の手が入った処理になります。
ブリリアンカットも「どうしたら一番輝いて見えるか」とダイヤモンドのポテンシャルを存分に活かそうとした知恵と技術の結晶です。

そう考えると原石以外は何かしらの処理をされている、と捉えてもいいでしょう。

処理をすることにより宝石とし扱えなかったランクの石も流通可能となります。
需要と供給のバランスの中で処理は一般的なものとなっています。

私が主に扱っている天然石は宝石とは少しジャンルが違うことに気がつきました。
「宝石」の本には登場しない石が天然石に沢山あります。
逆に天然石では扱わない石が宝石にあります(ダイヤモンドやエメラルドなど)


ルビーやサファイアなどは「宝石」と「天然石」の両方で扱いますが、明らかに見た目が違います。
ストレートに言えば質が違う。

いわゆる「宝石」に選ばれる石は明らかに一級品の美しさがあります。
選ばれなかった石が天然石になるのですが、自然臭が残った石もまた愛らしいものです。

また天然石の中で人気のロードクロサイト。
美しいけれど脆いので「耐久性」も重視する「宝石」には入りません(入れられない)


「宝石」と「天然石」は元になる鉱物は同じですが、違うジャンルとして楽しむのも良いと思います。
天然石は何より金額的にも手に取りやすく、そして日常的に使えることが魅力です。

処理によって価値が下がるものではありません。

但し「やり過ぎ」と判断される処理もあり、宝石によっては価値が下がるものもあります。
処理の技術、加工の技術は日々進化しています。

合成石と模造石

技術が進んだお陰で処理ではなく、人工的な石も作られるようになりました。
当然天然由来(地球から自然に生まれた)「宝石」とは分けて考えるもので、価値の付け方も異なります。

・合成石
天然由来の宝石と同じ結晶構造、化学組成、特性がほぼ同じものです。
例として合成ダイヤモンド、合成エメラルド、合成オパールなどが挙げられます。


ダイヤモンドはラボで製造されることから「ラボグロウンダイヤモンド」とも呼ばれ、近年多く出回るようになりました。
ダイヤモンドにおいては天然と合成は肉眼での判別は難しいと言われています。

価格的には同じ質で天然石よりラボグロウンダイヤモンドは20〜40%安いようです。
「天然であること」の希少性が優位になっています。


私もラボグロウンダイヤモンドを見たことがありますが、全く分かりませんでした。
ラボグロウンダイヤモンドの最大のメリットは同じ金額でも天然のダイヤモンドより大きな粒を手に入れられること。
持ち主さんもラボグロウンダイヤモンドであることを承知で身につけられていました。

最近ではサスティナブルな宝石であるという価値観も生まれています。
このように合成石に対する価値観は時代と共に変わっていくもので、値段的なものも変わっていくかもしれません。

・人造石
天然には存在しない化学組成と結晶構造を持つもの。
有名なものはキュービックジルコニア(CZ)があります。

・模造石
外観や質感を宝石に似せて作ったもの。
プラスチック、ガラス、セラミックなどが使われます。
模造真珠、模造トルコ石など。

別の記事で各処理について書いていきたいと思います。