天然石の予備知識。
「天然石」って「天然の石なの?」と思ったことはありませんか?
知るほどに奥が深い石の世界。
勉強を始めた頃は「へ〜」の連続でした。
より身近に、興味深く石を感じて頂ければ嬉しいです。
また知識はお買い物する時にも役立つと思います。
呼び方(名前)
天然石には概ね4つの名前があります。
◉鉱物名:鉱物学の学術的に定められた名前
◉宝石名:石の見た目や歴史から付けられた名前
◉別名:通称(一般的に使われている名前)
◉コマーシャル名:流通名

こちらは現在「ムーンストーン」として市場に出ている石の鑑別書。
白くて青いボーとした光(シラー)が見える石です。
◉鉱物名:フェルドスパー
◉宝石名:ペリステライト
◉別名:アルバイト・ムーンストーンと呼ばれています
順番などは鑑別機関によって異なるかもしれません。
実は「ムーンストーン」は鉱物名でも宝石名でもありません。
でも、今は「ムーンストーン」が一般的に認知され、使われているので摘要欄に別名として記されています。
同じ鉱物でも色が変わると宝石名が違うものもあります。
鉱物名と宝石名が同じ石もあります。
例えば
①ルビー
◉鉱物名:コランダム
◉宝石名:ルビー
ルビーはサファイアと同じ、鉱物名コランダムです。
赤色だけ「ルビー」と呼ばれ、それ以外の色は全てサファイアになります。
逆にサファイア=青だけではなく、ピンクサファイア、イエローサファイアなど「色+サファイア」と呼ばれます。
②ロードクロサイト
◉鉱物名:ロードクロサイト
◉宝石名:ロードクロサイト

市場では「インカローズ」と呼ばれ、こちらの名前のほうが通っているかもしれません。
鑑定では「インカローズ」の記載はありませんでした。
私たち購入者は別名/コマーシャルネームのほうが身近です。
別名とコマーシャル名の違いは鑑別機関が認めているかどうか、だそうです。
コマーシャル名は「その石の雰囲気を伝わりやすく、且つ惹かれる表現」のことが多い気がします。
特別感を出す為に付けられることもあります。
また「オレンジ色の・・・」と伝えるより名前が付いていると探しやすいですね。
時代によって流行や人の好みが変わっていき、一般的になっていけばコマーシャル名が別名として採用されることもあるそうです。
以前、茶色いインカローズが「メンズ・インカローズ」という名前で売られていました。
こちらはコマーシャルネームでもなく、キャッチコピー的な使い方です。
色々な呼び名のあるガーネット
◾️鉱物名
・パイロープガーネット(深い赤)
・アルマンディンガーネット(ややピンク味を帯びた赤)
・スペサルティンガーネット(華やかなミカン色)
・グロッシュラーガーネット(緑、無色、黄色)
・アンドラダイトガーネット(黄緑)
◾️宝石名
・ロードライトガーネット(パイロープとアルマンディンが混ざった石)
・スペサルティンガーネット(華やかなミカン色)別名「マンダリンガーネット」
・マラヤガーネット(パイロープとスペサルティン、時にアルマンディンが混ざった石)
・ツァボライト(グロッシュラーの中で透明感がありエメラルドのような緑を呈する石)
・マリガーネット(グロッシュラーとアンドラダイトが混ざったもの)
・ヘソナイト(グロッシュラーの赤褐色〜オレンジ色のもの)
成分が混ざっているガーネットは個体差があり、鑑別機関によっては宝石名表記が「ガーネット」だけになることもあるそうです。
天然石としてはアルマンディン、ロードライト、グロッシュラーを使うことが多いです。
コマーシャル名「シベリアングレープガーネット」(透明度の高い葡萄色)がお気に入りです。

左:シベリアングレープガーネット、大粒:パイロープガーネット、小粒:ロードライト

左:種別なく「ガーネット」と売られているもの、右:ヘソナイト

左:ツァボライト、右:グリーンガーネット
天然石と宝石の違いは石のクオリティ、石を最も輝かせる細かいカットの有無でしょう。
天然石では扱えない石(宝石)も沢山あります。
ダイアモンドは天然石ではほぼ扱えませんし、エメラルドも宝飾売り場のエメラルドとは違います。
宝石は宝石としての技巧を加えた美しさがあり、天然石は天然石としての味と美しさがあります。
宝石質も少しずつ集めてサンプルとしてお見せしたいと思っています。
次は処理について書こうと思います。