パッキリとした黄緑が眩しい石です。
鉱物名「オリビン」
宝石名「ペリドット」

◉8月の誕生石
◉結婚2周年・藁婚式の石(日本)
◉結婚16周年の石(アメリカ)
◉生命の木・「4・ケセド=可能性」と「6・ティファレット=自分自身」を繋ぐパス
パスに該当するタロットは「9番・ハーミット(隠者)」乙女座=水星が対応
◉ナヴァラトナでは水星の石(知性・コニュニケーション)
◉第4チャクラに対応(ハート・心)
【石言葉】
平和、豊穣、希望、可能性を拡大する、ネガティブな気持ちを明るくする、夫婦の幸せ、魔除け
名前の由来と「ペリドット」の歴史
非常に存在感のある石。

その輝きは太陽を連想させました。
古代エジプトでは太陽神信仰がで、太陽は王(ラー)と結びつけられます。
ペリドット=太陽の石=王の石。
また、豊穣の女神であり、母性・魔術の女神でもある「イシスの涙」から生まれた、とも言われていました。
エジプトの国は花は睡蓮です。
ペリドット内部には睡蓮の葉に似た円形亀裂があるのが特徴(無いものもある)
この亀裂を「ウォータ・リリー・リーフ(water lily leaf)」言い、ペリドットを特定するポイントの一つです。
円形亀裂=太陽の煌めきと捉え「サンスパングル(Sun Spangle)」と呼ばれました。
かのクレオパトラはエメラルドを愛した女王として有名ですが、殆どはエメラルドではなくペリドットだったそうです。
その頃はエジプトの近く、紅海にあるSt.John’s島で良質のペリドットが採掘され、エジプトからギリシャ・ローマへと伝えられました。
St.John’s島近辺は霧が深く、探すのが困難。
島の別名「Topazios島」は「探す」のギリシャ語「topazios」
名前の通り、当時は「トパーズ」という名で流通していたようです。
ペリドットの名前の由来
「宝石」を意味するアラビア語「faridat」
「美しい妖精」を意味するペルシャ語「peri」
「明るい点」を意味する中世英語「peridote」
「不明な」を意味するフランス語「perito」
「豊富」を意味するギリシャ語「peridna」
など由来は諸説がり、特定はされていないようです。
12世紀に十字軍によりフランスに渡り、「悪魔から身を護る石」と大切にされました。
鉱物としてのペリドット
鉱物学の分類では「オリビン(Olivine)」です。
ペリドットは成分的には2つの鉱物が混ざった固溶体の鉱物です。
・フォルステライト(Forsterite)マグネシウムが多い→黄緑から緑に発色
・ファヤライト(Fayalite)鉄が多い→褐色が強く黒っぽく発色
宝石・ペリドットとして扱われるのは主成分がフォルステライト、13%程度ファヤライトがを含んだもの。
黄緑はマグネシウムに含有される微量のニッケルによるものです。
ペリドットは屈折率が高く(1.654〜1.690)、宝石の中に入った光が2方向に屈折する複屈折性を持っています。
つまりキラキラ度が高い石。
そのため、暗い照明の下でも緑が鮮やかに見えるので「イブニング・エメラルド(Evening emerald)」と呼ばれていました。
言い伝えとしてペリドットは太陽を浴びると見えなくなる。
見つけやすいので夜に採掘されていた。
鉱物名「オリビン(Olivine)」と和名「かんらん石」
英語で分かる通り「オリーブの実の色」に似ているので1790年に「オリビン」と命名されました
語源はラテン語です。
和名は「かんらん石(橄欖石)」になります。

実はオリーブと似ている植物で橄欖があります。
実も生では苦く、加工すると美味しい点も似ていました。
中国で「オリーブ」を漢訳する際「橄欖」と訳し、そのまま日本名になりました。
植物の「斎墩樹(エゴノキ)」も実はオリーブ。
著作「植物記記」で「らんまん」のモデル、植物学者・牧野富太郎博士は
『本草綱目啓蒙』を始めとして皆そう書いているが、これはトンデモナイ間違いで、斎墩果は決してエゴノキではない。しからばそれは何んの樹であるかというと、これはかのオリーブ(Olive 則olea europaea L.)の事である。この斎墩果はすなわち斎墩樹の事で・・・
それならオリーブをどうして斎墩樹というかと言うと、この斎墩樹は元来が音訳字であって、それは波斯国(ペルシャ)でのオリーブの土言ゼイツン(Zeitun)に基づいたものに外ならないのである。すなわち斎墩樹はオリーブの音訳漢名なのである。
漢名にはその適用を誤っているものがすこぶる多い。彼のケヤキに欅の字を用い、アジサイに紫陽花を用い、ジャガイモに馬鈴薯を用い・・・オリーブに橄欖を用い・・・スギに杉を持ちうるなどその誤用に文字実に枚挙にいとまがない。
と熱弁を振るっている。
植物名の取り違えは分析が発達していない昔にはよくあることです。
エゴノキの本来の和名は野茉莉だそうです。
万葉集にも沢山の植物が登場しますが、博士はその検証もしています。
地球を作っている石
地球は「核・マントル・地殻」の層になっています。
※図はWikipediaから。

この構造は卵の「黄身・白身・殻」に例えられます。
マントルは白身で地球の体積の約80%。
マントルの主成分がカンラン石。
多くの鉱物が地殻で作られるのに対して、かんらん石は地球深部60kmの上部マントルで生成されます。
地球を支えている、作っている石とも言えます。
ペリドットに対応する女神
◉ラクシュミー
ヒンドゥー教の「美・富・豊穣・幸運」を司る女神。
仏教では吉祥天。
蓮華の目と蓮華の色をした肌を持ち、蓮華の衣を纏い、4本の手には蓮華、金貨が入った袋を持って描かれることが多い。
◉パックス(PAX)
ローマの「平和と秩序の女神」「春の女神」
古代ギリシャのエイレーネー(Irene)に由来。英語ではPEACE。
内戦が絶えない時代、皇帝アウグストゥスが「平和を崇拝する」ことで治安を維持しようとしました。
パックスとアウグストゥスは同義語となり、パックスの普及によってアウグストゥスの治世を広げようとしました。
ローマにおける平和の概念と語源である「pax」はラテン語の「pacisci」に由来しています。
「pacisci」は「合意する」「契約を結ぶ」「交渉する」といった意味です。
現在の「(戦のない)平和」ではなく、戦争を終結させ、降伏または他勢力との同盟につながる協定として捉えられていました。
現在の「平和」の概念はその後入ってきたキリスト教によって作り変えられ、同時にパックス崇拝は消えていきました。
パックスの象徴はオリーブ、カドゥケウスの杖、豊穣の角、穀物、王笏。
ハワイとペリドット
ハワイでペリドットは「ハワイアン・ダイヤモンド」と呼ばれています。
ペリドットはハワイのお土産で有名ですが、現在ハワイでは採集禁止のため、売られているものはアリゾナ産。
ペリドットはマントルの中で生成され、マグマによって地上地殻に運ばれます。
ダイヤモンドヘッドは太陽の光で輝いていたことからの命名ですが、この輝きはペリドットでした。
ハワイの先住民は火山の女神「ペレの涙」と考えていたようです。
エジプトでも「イシスの涙」と呼ばれていました。

ペリドットはマントルで形成され、マグマによって地上近くに運ばれます。
過酷な環境を通ってきたペリドットは写真のように細かい石として見つけられることが多いです。
今でもハワイのグリーンサンドビーチには細かなペリドットが砂浜で輝いています。
でも大きなジュエリーとしてのペリドットも存在します。
マントルから運ばれている途中で熱水により再結晶をして、それが採集されることがあります。ヒマラヤ山脈やマントル物質が露出している紅海がその採集場所になる環境です。
隕石の中のペリドット
地球には隕石が落ちてきます。
その中にペリドット(正確には成分が少し違う)が混ざっているそうです。
それを「パラサイト・ペリドット」と呼んでいます。
太陽系の惑星と同じように生まれた沢山の小惑星がある。
その小惑星の破片が地球にやってくると隕石と呼ばれます。
小惑星も地球と同じように鉄とかんらん石のよる岩石を中心に作られており、隕石に含まれるのもうなづけます。
宇宙と地球・原始的な生命力
地球を構成する石であり、マントルで生まれ、マグマによって地上に運ばれて輝く。
宇宙からやってくる隕石の中にも入っている。
確かに一粒でもパワフルなエネルギーを感じます。
隕石由来のペリドットは地球とほぼ同じ45〜46億年前に出来たと言われています。
再結晶されたものでさえ数百万年前です。
地球を含む惑星の土台を作っている石。
宇宙規模の野生的な原始的な生命力が詰まっている、と思わず考えてしまいます。
モース硬度は水晶の少し下程度で強いはずですが、地上に出てくる過程で大きな圧力の変化によってクラックが入り易い。
天然石で扱うペリドットはそのクラックが特徴です。
先に書いた通り「ウォーターリリーリーフ」と呼ばれる独特の内包物も特徴。
ペリドットが生まれ、私たちの手にやってきた旅の時間を考えると勇気を貰えそうです。
おまけ
生命の木・「4・ケセド=可能性」と「6・ティファレット=自分自身」を繋ぐパスに対応します。
パスに該当するタロットは「9番・ハーミット(隠者)」
乙女座が対応し、乙女座の守護星は水星です。
ナヴァラトナではも水星の石として扱われています。
水星は知性、思考、言葉や文字、コミュニケーション。
「伝達」の意味もあり、「運ぶ」「繋ぐ」のも水星の役割です。
乙女座は8月23日頃から9月23日。
収穫の時期で象徴は大地、小麦など。
「乙女」はギリシャ神話の豊穣の女神デメテル、あるいはその娘のペルセポネ。
あるいは両方とも言われています。
ペルセポネは冥界の王・ハデスに誘拐され、デメテルによって助け出されますが、「冥界の女王」と呼ばれています。
当時、冥界は地下・地面の下にあると考えられていました。
心理学的に捉えると自分の心の深いところ。
ペリドットも地球の深いところで生成された石。
そして知性や思考と関わりがあるようです。
太陽のポジティブなエネルギーを持ちつつ、自分の奥深い核心に迫っていく時。
感情ではなく理性的に自分を掘り下げて行きたい時。
暗闇と思われる場所にもペリドットは明るい光を与えてくれる。
ペリドットに惹かれた時は内省を促している時かも、です。